ピックアップレーサー記者コラム
地元の雄・白井英治の賞金ランキングは9月5日時点で41位となっている。今年の優勝は7月の徳山一般戦どまり。参戦したG1レースはほぼ予選突破を果たしているものの、ファイナル進出は宮島の中国ダービー(4着)のみだ。なお、SGレースの優出はまだない。
となれば、通算V26としている地元徳山で巻き返しを図りたい。2008年と2022年の周年記念覇者は2018年6月の徳山グランドチャンピオンも制している。
その持ち味のひとつにスタート力があるのは周知のところだが、平均スタートタイミングはコンマ14前後と、実は飛び抜けた値ではない。
ただ、ここ一番の一撃は強烈で、相手構わず強気に攻めるレースでファンの度肝を抜いてきた過去があるゆえのイメージだろう。
とりわけ、4カド戦は絶対に注目。コンマ12平均のタイミングで一気に仕掛け主導権を握るからだ。当然、波乱を演出することもあり、穴党ファンへの貢献度も高い勝負師である。
レジェンド・今村豊さんの薫陶を受け、道具を大切にしてきたホワイトシャークの姿勢は今も変わらない。ボートを磨き、モーターを磨き、技を磨き、心を磨く勇者は誰かと問われれば、多くが白井英治と答えるだろう。
「ほんとうの強さを身につけたい」。峰竜太は令和5年優秀選手表彰式典でこう話した。それは、数字には表れない内面の強さである。
2004年11月のデビューから20年が経とうとしている今、「間違いなく衰えが出始めている」と語る。動体視力をはじめ判断力や反射神経に経年変化が生じているというのだ。
それを補うのが「経験値」であり「不屈の精神」、そして「チャレンジ精神」である。
丸亀で開催された「SG第70回ボートレースメモリアル」の準優は1号艇でありながら、まさかの2コース周りに…。3着敗退後、「コースがすべて。レース中も冷静になれなかった」と唇を噛んだが、翌最終日は5コースからのまくり差しとイン逃げで連勝ゴール。挫けない心の存在を証明している。
そういえば、「舟足はすべてにおいて劣勢」と語っていたのがこのボートレースメモリアルの前検日。オープニングセレモニー直後のドリームインタビューでは「どうなるかは分かりませんが、良くなるよう整備してみます」と現状打開のため挑戦する意志を示していた。結果が約束されていないからこそ勝負する意義があるのだ。ボートレーサー峰竜太の真骨頂は、そこにこそあるといってもいいだろう。
通算優勝回数66のうち徳山は22。寺田祥にとって、栄冠の三分の一に相当するドル箱プールが徳山である。周年は2020年の66回大会で4コースカドから絞りまくりで優勝している。
淡々としているようで意志の強い勝負スタイルはデビュー当時からのもので、20代の頃は「群れることなく一人で戦い抜きたい」と語っていたほど。妥協なく戦う姿勢を貫いてきた歴史がある。
SGV2、G1V10と記念戦線で残してきた成果は誇るべきものだが、もうひとつ誰もマネができない芸当がある。スタート事故の少なさだ。選手生活26年10カ月ほどでフライングはわずか9本。出遅れも3本限りなのだ。
圧巻は、2003年2月21日から2014年10月12日までの約11年7カ月、2910走にわたりスタート事故を起こさなかったこと。それも記念レースを走り続けてるなか達成した記録であったことを想うと意志の強さが分かる。
そのメンタルは今期(2024年後期)を含め48期連続A1級に表れているばかりか、82.3%のイン1着率や21.4%ある3コース1着率(2024年1月1日~8月31日)となって発揮されている。
荒ぶることなく静かに燃える寺田祥に注目したい。
8月27に開幕した「SG第70回ボートレースメモリアル」初日。松井繁は清々しい表情でオープニングセレモニーのステージにいた。
会場を埋め尽くしたファンの姿に感激し、そこに立っていることの喜びと感謝の念が去来していたのは明らかだった。
温かで決意に満ちたその眼差しに、ファンの多くが「応援に来てほんとうによかった」「やっぱりかっこいい」と語っていたものである。名前入りタオルなどグッズを求める若いファンが多いのは、SGV12、G1V59、通算V143という結果だけが王者の風格ではないと知っているから。策を弄したり小技に走らず、正々堂々戦うことを旨としてきた歴史に深淵な人生哲学が存在している。
戦いの舞台徳山は2020年2月の一般戦が初優勝。これまで記念タイトルに縁がなかったがマイナス要素にはならないだろう。王者はこれまで、レース場の得意不得意を口にしたことがない。一歩踏み込んで言えば「舞台を選ばないのがプロ」「相性はつくるもの」と考えてきたはずだ。
毎日初心に立ち返り、経緯や傾向に囚われることなく常に新鮮な気持ちで水上に進み出ている松井繁。この徳山周年もまったく変わりはなく王道のレースに徹することだろう。
SGV10,G1V14の池田浩二の人気がさらに高まりをみせている。そのカタチが一昨年5月の芦屋ボートレースオールスターにおけるファン投票1位。今年の多摩川大会も峰竜太に次ぐ2位となっている。
若いファンに聞けば、「レースがキレイ」「カッコよく勝つところがいい」「端麗なのに洒落っ気もあって面白い」「レースが巧い」「勝負強い」「舟券を託せる」などの声が返ってくる。ブレの少ない頼りになる存在なのだ。
その強さは凄まじく通算優勝回数を97としているばかりか、今期を含め47期連続A1と極めて高い安定感を誇っている。ちなみに、このうち勝率8点を超えた期が16期もあるのだ。
今年はここまで蒲郡で開催された東海ダービー(2月)をはじめ通算V4。尼崎グランドチャンピオンと丸亀ボートレースメモリアルで優出するなど賞金を積み重ね、ランキング8位(9月5日時点)につけており堅調といってもいいだろう。
2011年、住之江で開催されたSGグランプリで優勝した際、「緊張したものの、ピットアウトしたら、ただひとつのレースに過ぎないと感じ普段の力が発揮できた」と語ったことのある池田浩二。勝負に最も大切な平常心を携える勇者にほかならない。
菊地孝平の武器は紛れもなくスタート力である。それは過去3年間(2021年9月1日~2024年9月5日)のデータに明らかだ。
平均スタートタイミング=コンマ11
1コース=コンマ11
2コース=コンマ11
3コース=コンマ11
4コース=コンマ10
5コース=コンマ11
6コース=コンマ10
平均スタート順=2.3
人並外れた動体視力の持ち主の能力はそれだけではない。
「調整力」「察知力」「判断力」「度胸」「行動力」「運動能力」…。どれをとっても超一流であることは論を待たないが、競走そのものを支える「調整力」も相当なものである。
一旦取り掛かれば微細なプロペラ調整に専念するのが菊地流。時を忘れて没頭するほどだが、その作業はゲージに合わせるというよりも、水流や回転状況を想像するようなイメージ。つまり、答え合わせの調整をしないのである。
徳山は過去V3。そのひとつが、オール3連対で優勝した昨年11月の70周年記念。つまりディフェンディングチャンピオンとして登場する。
9月5日時点で賞金ランキング3位につけている菊地孝平にとってここからが正念場。負けられない日々が続く徳山のレースぶりに注目したい。